昼と夜のアラビアン ジオマンシーカード 使いかた、読み解きかた

ジオマンシーの起源

アラビアの占いジオマンシーには、天使ジブリール(ガブリエルのアラビア語読み)が、賢者イドリース(ヘルメス・トリスメギストス)に授けた秘宝だったという神話的な起源が伝えられています。

しかし、ジオマンシーの本当の起源は、9世紀頃のアラビア半島周辺地域で使われていた、砂の占いとされています。この地域は砂漠気候に該当し、高温乾燥で、昼夜の気温差が大きという特徴があります。砂占いは、そんな厳しい自然の中でいく抜くために伝えられてきた素朴な占いや呪術の一つです。

呪術を唱えながら、砂の上に棒や指で線を描いて偶数か奇数かで占う素朴な砂占いは、やがて占星術の要素を取り込んで洗練させたものになっていきました。

↑エジプトまたはシリアで製作されたジオマンシー用装置。ダイヤルを回すとドットのパターンが無作為に現れるので、それを解釈する。(wikipediaより)


当時のアラブ世界は、世界の数学や化学、天文学など、学問の最先端でした。エジプトでは、計算してシンボルを導き出すことができる精巧なジオマンシー計算機も作られました。


14世紀、歴史家のイブン・ハルドゥーンが記したアラビアの歴史書には、「生計のためにジオマンシーをするものが多数いる」記されています。未来を知るために、身体や心の病を癒すために、また身近なトラブルを解決するために、人々はジオマンシー占い師を頼ったのです。

↑『占い師』(1906年)ルートヴィヒ・ドイッチュ作

*砂を広げ指で突きながらジオマンシーをする、中東の占い師が描かれている。


ジオマンシーは中世にヨーロッパに伝わりましたが、脚光を浴びるようになったのは19世紀ヨーロッパです。ナポレオンが使っていたという触れ込みで、二冊のジオマンシーの本がロンドンで出版され、それによりジオマンシーは社交会のディナーで必ず話題になるほどの流行になりました。

20世紀には、魔術結社ゴールデン・ドーン(黄金の夜明け団)が、ジオマンシーと星座対応を見直し、より整合性のある形へと完成させました。(そのため、ジオマンシーには数種類の占星術対応があります)。

アラビアで誕生した砂占いは、砂からペンと紙へ、としてカードやアプリへと、使う道具を変えてきました。けれど、四段の陰と陽でできた16のシンボルを使って占うという根本は変わっていません。これほど遠く長い年月の間、変わらない形で伝えれらて来たのは、ジオマンシー占いが、シンプルに「当たる」占いだからです。


世界を構成する16種類のシンボル

ジオマンシーは、この世界を構成する対極の二つの要素、陰と陽を使う占術です。
ジオマンシーのシンボルを導き出すには、ランダムに点を打つ、コインやダイスを投げるなどして陽(奇数あるいは表)か陰(偶数あるいは裏)かを求めます。

陽ならばドットを1つ打ち、陰ならばドットを横に2つ打ちます。それを4回繰り返して、導き出されるシンボルは全部で16種類あり、四段の陰と陽の組み合わせで成り立っています。

また、ジオマンシー・シンボルは、1~16までの順番が決まっており、本来はラテン語の名称がついています。これらのシンボルは「多い」「少ない」「内」「外」のように必ず二組ずつペアになっています。ほとんどの場合、シンボルの意味が対になっているため、セットで覚えると覚えやすいでしょう。

↑『アラビアンジオマンシーカード占い』(発行FCM)よりシンボル一覧



32枚のアラビアンジオマンシーカード

「現象として起きる」昼の世界と、「目に見えない」精神的な夜の世界

ジオマンシーは砂に点を打つ占いから始まり、ペンと紙を使う方法や、ダイスや天然石で占う方法が考案されました。そして1980年代には、フランスで初めての「ジオマンシーカード」が発売されます。本来シンボルを導き出すには4回陰陽を求めなければならないのですが、カード化することで一度にシンボルが導き出せるようになりました。

そして高橋桐矢先生が考案した『アラビアンジオマンシーカード』では、本来の16枚に加え、さらに昼と夜の陰陽を加えることで「32枚」となったことが最大の特徴です。

32枚のデッキは、昼(ダイアーナル)のカード16枚と、夜(ノクターナル)のカード16枚に分かれます。
シンボル自体の意味は共通で、昼と夜は基本の意味が現実化するときの違いを表しています。


「昼のカード」(ダイアーナルカード)・・・目に見える具体的な出来事、物質的な損得、昼間の出来事、公式のもの、オフィシャルな部分

「夜のカード」(ノクターナルカード)・・・心の中の状況、精神的な問題、目に見えないもの、準備段階、夜の活動時間、プライベート。


陰陽の「陽」に相当する昼のカードは、はっきりと見てわかる具体的な現象となり、「陰」に相当するカードは、内面や精神的な部分に作用すると読みます。

ジオマンシーカードには、タロットのような逆位置がありません。そのため夜のシンボルの場合は、昼よりも意味が弱まる、あるいは現実性が薄いと読むこともできます。


たった16種類のシンボルズバリ占えるシンプルさが、ジオマンシーの良さですが、「もう一歩踏み込んで細かく知りたい」と思うときに、昼と夜が役立ちます。陰陽でできたジオマンシー・シンボルに、さらに昼と夜という陰陽を重ねることで、占い結果が色鮮やかに立体的に浮かび上がってくるのです。

また、アラビアンジオマンシーカードを使わなくても、シンボルの昼と夜を導くことができます。

通常の手法で出してから、さらにもう一度同じ手法で「奇数か偶数か」または「表か裏か」を出しましょう。

奇数あるいは表が出れば「昼(陽)、偶数あるいは裏が出れば「夜」(陰)として昼と夜を決定します。


1 人々 Populus(ポプラス)   

 「メインキーワード」 多い 増える 一般的

 「昼」 活気あふれる人間関係を表す   

 「夜」 親しい人たちとの絆を深める   

2 道 Via(ヴィア)

 「メインキーワード」 変化 旅 決断

  「昼」 力強く進む変化の道       

  「夜」 水面下で起きている何か

3 つながり Conjunctio(コンジャンクショ)

  「メインキーワード」 結びつき 集合 結合

   「昼」 オフィシャルなコミュニケーション

   「夜」 心の底でつながる深い関係    

4 拘束 Carcer(カルサ―)

  「メインキーワード」 とらわれる 動けない

   「昼」 物理的・時間的に動けない

   「夜」 精神的な孤独や、周囲との断絶

5 大吉 Fortuna・Major(フォーチュナ・メジャー)

  「メインキーワード」 大吉運 自力運

   「昼」 主役になれる最高のとき

   「夜」 心の底から満足できる充実感

6 小吉 Fortuna・Minor(フォーチュナ・マイナー)

   「メインキーワード」 小吉運 他力運

   「昼」 周囲に助けてもらい幸運に

   「夜」 日常の中のささやかな満足感

7 獲得 Acquisitio(アクウィシショ)

   「メインキーワード」 収穫 利益 満たされた杯

   「昼」 確実な利益に期待できるとき

   「夜」 心が満たされていると実感

8 喪失 Amissio(アミッショ) 

   「メインキーワード」 損失 放出 空の杯

   「昼」 物質的な何かを失うおそれ

   「夜」 精神的エネルギーの消費

9 喜び Laetitia(ラエティーシャ) 

   「メインキーワード」 幸せ 健康 笑

   「昼」 テンションが上がる瞬間

   「夜」 じんわり嬉しい至福のとき

10 悲しみ Trietitia(トリステシャ)

   「メインキーワード」 不幸 宿命

   「昼」 想定外のトラブルの暗示

   「夜」 精神的な重圧感を受けそう

11 少女 Puella(プエラ)

   「メインキーワード」 女性 美

   「昼」 豊かな感受性と愛らしさ 

   「夜」 愛する人との強い共感力

12 少年 Puer(プエル)

   「メインキーワード」 男性 力

   「昼」 エネルギッシュな戦いと戦争

   「夜」 焦りばかりで行動がともなわず

13 白 Albus(アルブス)

   「メインキーワード」 公正 純潔 

   「昼」 正しいことが報われる

   「夜」 真理と向き合い、誇りを得る

14 赤 Rubeus(ルベウス)

   「メインキーワード」 悪 不和 トラブル

   「昼」 身近にある、波乱と危険

   「夜」 不誠実な人物やトラブルの種

15 龍の頭 Capus Dracnis(カプト・ドラコニス)

   「メインキーワード」 始まり 入場

   「昼」 駆け上がる龍のごとき勢い

   「夜」 何かを始めたい決意に満ちる

16 龍の尾 Cauda Draconis(カウダ・ドラコニス)

   「メインキーワード」 終わり 退出

   「昼」 続けてきたものごとの終わり

   「夜」 過去の栄光を懐かしむ



今がどんなに苦しくても
未来が救われることもある…「錬成」の面白さ


ジオマンシーには2つ以上のシンボル(例えば、自分と相手)のドットの数を足し合わせて、第3のシンボルを導き出す手法があります。

他の占いにはみられない非常にユニークな方法で、現在の状況に新しい要素を加えることにより、予想外の結果が導き出されることから、『アラビアンジオマンシーカード占い』の書物の中で【錬成】という言葉を用いて紹介しています。

【錬成】を使用するスプレッドは書籍の中でいくつか紹介していますが、最もシンプルな【錬成】は、2つのシンボルを足し合わせる「スリーカード」です。ジオマンシーのスリーカードは、他のタロットカードやルノルマンカードと異なり、最初に並べるカードは2枚のみ。3枚目は【錬成】によって自動的に導き出されます。


【錬成】の導き出しかた<ドット編>

1、アラビアンジオマンシーカードを①、②の順に並べ(アラビア式に右から並べます)、

ドットの数を段ごとに別々に足し合わせます。

2、1で導き出された数を陽(奇数)と陰(偶数)に置き換え、ドットに変換して新たなシンボルを生み出します。

錬成により、「竜の尾」と「白」の結果は「小吉」となります。書籍には読み解きかたの実例が数多く紹介されているので、そちらを参考にしてください。

【錬成】の導き出しかた<昼と夜編>

昼と夜の錬成は、足し算ではなく「掛け算」で導き出されます。
昼を(+)、夜を(ー)の計算式で結果を導き出しましょう。

シンボルが同じでも、昼のカードは目に見えた現象としてすでに起きていることであり、夜のカードはこれから起こること、心の中だけで感じられることなど、現実の現象としては起きていない状態を差します。

これも書籍の中で詳しい実例とともに紹介されていますので、ぜひそちらも参考にしてください。

書籍『アラビアンジオマンシーカード占い』著者:高橋桐矢

2,310円(税込)A5判・ソフトカバー・本文1色 182頁 ISBN:978-4-9911596-1-9 C2011

『アラビアンジオマンシーカード』2,530円(税込)
W86×H59mm 32枚入りデッキ 早見表入り JAN 4573546650061

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